妊娠中に血便が出た
妊娠中におしりからイボのような出っ張りがでた、排便時に肛門周囲が痛む、排便時に血が出るなどの症状があり、不安を感じる方も多くいらっしゃいます。
痔か、他の病気かわからず、いろいろと考えて悩まれるかと思います。
妊娠中は、痔になりやすいので、多くの妊婦さんが血便の症状に驚いて肛門科を受診されます。
痛みや出血がある時は、なるべく早めにご相談ください。
妊娠中の血便の多くは痔が原因です
妊娠中に血便があっても特に痛みがなくて不安になる方も多くいますが、妊娠中の血便の多くが痔によるものです。痔はいくつかの種類があり、痛みがあるものとないものがあります。
| 内痔核 | 出血のみで痛みはあまり無い |
| 血栓性外痔核 | 出血と痛みがある |
| 切れ痔 | 出血と痛みがある |
血栓性外痔核は、血豆のようなものが肛門の外側付近にできたものです。内痔核は、歯状線の内側にできるいぼ痔で、ある程度の大きさになると排便時に外に脱肛します。
脱肛すると、お尻に違和感があり指で押すと元の位置に戻ります。
指で押しても元に戻らないのは「嵌頓痔核」です。強い痛みと腫れ、出血を伴います。嵌頓痔核になると、症状が改善するまでに1～2週間ほどかかってしまいます。鎮痛薬を飲んでも痛みが引かずに治療が長引きます。 妊娠中にお尻に違和感がある、いぼのようなものがある、排便時に出血があるなどの症状が出たときは、早めに肛門科を受診するようにしましょう。
妊娠中は痔が悪化しやすい？
妊娠中は、痔が悪化しやすい傾向があります。
妊娠すると、血液や体液の量が増加します。そのため、血管の塊である痔核にも血液が多く流れ込みます。さらに、妊娠中期から後期にかけて、子宮がどんどん大きくなっていくと、静脈が圧迫されて血液がうっ滞し、痔が腫れたり大きくなります。
また、妊娠中の体内は黄体ホルモン(プロゲステロン)と呼ばれる女性ホルモンが増加して、腸の動きが緩やかになることで、便秘になりやすくなります。そのため、便秘で強くいきむことが増えて痔が悪化しやすい環境となります。
字を悪化させないために妊娠中は、排便時のいきみを最長でも5分程度にとどめるようにしましょう。便意が無いにもかかわらず、強くいきむことも控えてください。
便が出にくいと感じるときは、食生活を見直す、便が柔らかくなる薬を医師から処方してもらう等の便秘対策がお勧めです。
妊娠中の服薬について
妊娠中は、薬が胎児に与える影響を考えてなるべく服用を控えたいと考える方は多くいらっしゃいます。しかし、薬も適切に使用すれば過度に心配する必要はありません。必要なタイミングで、適切な量の薬を服用することが重要です。
妊娠中は、便秘になりやすいため、便秘が続くことで痔を悪化させて血便や痛みが起こる原因となります。
妊娠中に、痔を発症したり悪化したりした場合は、痔の治療と併せて便秘の改善を行う必要があります。
痔は、軟膏や座薬などの薬を患部に塗る治療を行います。薬の中にはステロイドが含まれるものありますが、短期間で使用する分には、副作用の心配もありません。
便秘は、酸化マグネシウムやラキソベロンの内服を行います。また、食物繊維の多い食事を摂ることを意識することも大切です。日々の食生活の改善や見直しも、治療と併せて行うようにしましょう。
妊娠中の血便は、痔の他に大腸がんの可能性があります
妊娠中は、痔になりやすいといっても、血便=痔とは限りません。
特に、血便の他に下痢、粘液、腹痛、発熱の症状がある方は、痔以外の可能性があります。若い方に多く発症がみられる潰瘍性大腸がんや大腸がん、感染性腸炎などを発症すると、血便の症状が現れます。
妊娠中は、胎児への影響も考慮して、受けられる検査も限られます。
血便の症状があっても、痔だろうと放置せずになるべく早めに医療機関を受診しましょう。
院では、女性や妊婦さんに配慮した診療を行っています
妊娠中に血便の症状があっても、恥ずかしさから医療機関を受診するのが遅くなる傾向があります。おしりの診察は恥ずかしい、肛門科の診察がどんなものかわからず不安と感じる方も多くいらっしゃいます。
当院では、女性の方、妊娠中の方に配慮した肛門科診療を行っています。複数標榜なので、受診の際に肛門科診察だと周囲に気づかれる心配はありません。
診察時には、カーテンで仕切った診察台の上に横になって腰から下はタオルで覆い隠すのでおしりが見えることはありません。
妊娠中にお尻からの出血や痛みがある場合は、早めにご相談ください。
