直腸がん手術後の排便障害
直腸がん手術は、がんを取り除くことを目的として行いますが、手術後には手術の影響によって不都合な症状が生じる可能性があります。具体的には、排便障害による排便回数の増加や便の漏れなどが起こることがあります。
どのような手術で排便障害が起こるのか
肛門括約筋切除直腸切除術は、直腸がんが肛門付近にまで進行している場合に実施されることがあります。手術では、がんが存在する直腸の一部または全体を切除し、必要に応じて周辺のリンパ節も摘出します。
手術の方法はいくつかありますが、一般的には下腹部への切開を通じて行われます。直腸と肛門付近の組織や臓器を慎重に切除し、健康な組織を繋げて再建することで、排便機能を維持します。
しかし、肛門括約筋切除直腸切除術によって排便障害が生じることがあります。この手術では、肛門括約筋の一部または全体が切除されるため、肛門の制御機能が損なわれる可能性があります。その結果、便の漏れや排便の制御が難しくなる場合があります。
直腸がん手術後の排便障害は、以下のような症状や問題が起こる可能性があります。
1.排便回数の増加
直腸の一部または全体の切除により、便の通過が速くなる場合があり、排便回数が増えることがあります。
2.便の漏れ(フィスチュラ)
手術によって直腸の制御機能が損傷されると、便の漏れが起こることがあります。
3.便秘
手術後、便の通過が遅くなる場合や腸の運動が低下する場合、便秘が生じることがあります。
4.下痢
手術によって腸の吸収機能が低下する場合や腸の運動が速くなる場合、下痢が起こることがあります。
5.ストーマの影響
人工肛門(ストーマ)が造設された場合、便の排泄方法が変わります。ストーマの管理や適応に慣れる必要があります。
直腸がん手術で排便障害が起こる原因
直腸がん手術によって排便障害が生じる主な要因は、直腸の一部または全体の切除や直腸周囲の神経や筋肉の損傷です。これにより、便の通過や蓄積に関わる機能が影響を受け、排便回数の増加や便の漏れが起こる可能性があります。また、人工肛門(ストーマ)が造設された場合も、便の排泄が異なる方法で行われるため、適応や調節に慣れる必要があります。
直腸がんの手術後は必ず排便障害が起こるのでしょうか
直腸がんの手術を受けた場合、必ずしも排便障害が起こるわけではありません。手術の範囲や方法、患者の個別の状況によって影響は異なります。
一般的に、直腸の一部または全体の切除による神経や筋肉の損傷が肛門付近に近いほど、排便障害が起こる可能性があります。
排便障害の主な症状
排便回数の増加
手術後、便通が速くなり、排便回数が増えることがあります。
便の漏れ(フィスチュラ)
手術によって直腸の制御機能が損なわれると、便の漏れが起こることがあります。
便秘
腸の運動が低下し、便の通過が遅くなる場合に便秘が生じることがあります。
下痢
腸の運動が速くなり、腸が水分を吸収せずに便を通過させることで下痢が起こることがあります。
失禁(便失禁)
手術によって肛門括約筋が損傷されると、便の制御が難しくなり、不意に便が漏れることがあります。
変形した排便パターン
手術後、排便の形や性状が変わることがあります。便の形状や色、臭いに変化が現れることがあります。
排便障害の症状が出た後の経過について
一般的には、手術後数週間から数か月の間に排便の調整が進み、症状が改善することが期待されます。この期間中、患者は食事や水分摂取、適切な薬物療法などの指示に従い、便通の正常化を図ります。数か月から数年にかけて徐々に症状が落ち着いていきます。
一部の方では、何年経っても症状が持続する場合もあります。
排便障害の治療法
保存的治療
食事と水分管理
適切な食事と水分摂取は、便の柔軟性と腸の正常な運動を促進するために重要です。食物繊維や水溶性食物繊維を摂取することで便のかさを増やし、腸の運動を改善することができます。
適切な排便習慣の確立
定期的な排便習慣を確立することが重要です。毎日同じ時間帯にトイレに行くことや、排便を遅らせないことが大切です。
薬物療法
便通を改善するために、便軟化剤や便秘薬などの薬物が使用されることがあります。これにより、便の通過がスムーズになり、便秘や下痢を緩和することができます。
バイオフィードバック療法
バイオフィードバック療法では、専用の機器を使用して排便筋の活動や腹圧を測定し、患者が自身の筋肉をコントロールする方法を学びます。
運動療法
エクササイズやトレーニングで肛門を締める骨盤体操は、便意感や排便制御の改善に役立ちます。
外科的治療
肛門括約筋修復術
便の漏れ(フィスチュラ)が主な問題である場合、肛門括約筋の修復手術が行われることがあります。この手術では、損傷した括約筋を修復し、便の制御機能を回復させます。
人工肛門(ストーマ)再建手術
重度の便失禁や排便障害が持続する場合、人工肛門の再建手術が検討されることがあります。この手術では、腸を切断し、腹部にストーマを形成して便を外部に排泄する経路を作ります。
神経切断手術
神経切断手術は、腸の過剰な運動や神経刺激が排便障害の原因である場合に使用されることがあります。この手術では、腸の神経を切断またはブロックすることで腸の運動を制御し、症状を改善します。
バイオフィードバック療法
バイオフィードバック療法は、排便筋の制御を改善するための非侵襲的な治療法です。患者はセンサーやフィードバック機器を使用して、自身の筋肉活動を観察し、トレーニングを行います。